シチュエーション・ラヴ

桜井 Michelle 亜美

2026年6月21日

 「シチュエーション・ラヴ」を澪の肩にもたれて、部屋のソファで見ている。

 この映画がなければ、あたしたちはきっと結婚どころか告白もしてない。

 ふたりの人生を変えた映画だから、毎年、結婚記念日の6月21日には必ず一緒に見る約束をしている。今年で7回目。

 今でも思う。あのバンデミックの年、色んなケミが起こってあたしの世界線は変わった。でなければ澪があたしを選んだり、クレジットロールの最初にあたしの名前が出てくるわけがない。

 変化はアドニスブルーのモルフォ蝶のように、望んだ心にだけ舞い降りる。

 それでも澪の肩の窪みの中で、過去の自分にイラついたり切なくなったり恥ずかしさに悶えたりするのは、いつになっても慣れない不思議な感覚だ。

 ラストシーンで赤く眼をはらしたあたしの頭に、澪が笑ってふわっと大きな手をおく。

 「週末、またカメラを回して続きを撮ろう」

 この映画はまだ終わってないから。

 1つだけ2人で決めてる。

 エンディングは意地でも死ぬほど幸せな純愛映画にすると。

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